「講演会」劣化ウランってなに?――劣化ウラン被害と問題

2005・1・29
講師・森瀧春子(NO DUヒロシマ・プロジェクト世話人)

 放射能兵器・劣化ウラン弾(DU)廃絶のために、公開型講演会としては尾道初の標記講演会が、2005年1月29日(土)午後2時、尾道久保教会礼拝堂を会場に行われた(40人参加)。
 覚えているだろう。広島の6000人の人文字。「NO WAR NO DU!(戦争にNO 劣化ウラン弾にNO!)」。イラク戦争が始められた2003年3月22日のことだった。その航空写真は意見広告として3・24付ニューヨーク・タイムズに大きく掲載された。「声をあげよう今 NO WAR NO DU! ヒロシマは言う―ヒバクシャ(放射能被害者)をこれ以上出すことにNO!―ホワイトハウスは劣化ウラン弾の放射性および科学的毒性を否定しているが、それは偽りだ」…。ホワイトハウスのみならず日本でも自衛隊派遣の際、DUは安全との情報が流された(サマワはDUが使用された激戦地なのに。彼らのガイガーカウンターでは反応しないDUの特性を承知の上での派遣なのか)。その筋によって証拠を消され、安全神話が喧伝される前に、DUの放射能の影響を認めない米国に対して、科学的証明を提示し、使用禁止を迫るために森瀧さんは同年6−7月、イラクに入った。
 DU被害については、1991年の湾岸戦争帰還兵約20万人が健康異常を訴えた「湾岸戦争症候群」が知られている。各種の癌・白血病、帰還兵の子どもの約67%が重度の先天障害というその症状だ。イラク住民、特に、痛ましい子ども達の先天障害、奇病。白血病・癌の急増もご存知のことだろう。湾岸戦争では米英軍によって300t以上が砂漠地帯で使用されたが、イラク戦争では500t以上を都市部で使用したという米軍特殊作戦大佐の証言だからひどい話だ。それでもUNEP(国連開発計画)、WHO(世界保健機構)、欧州連合の科学者らや日米政府は、無害だ、通常兵器だ、と無視を決め込むのはどんな理由からだろう。実は1943年、原爆投下以前に米独は使用準備をしていた。そして50年後、イラク、ボスニア、コソボ、アフガニスタンでは通常兵器として使用された。このDUとはなんだろう。
 DU(劣化ウラン)は核兵器の製造過程や、核燃料サイクルの原子力燃料製造過程で排出される放射性廃棄物(捨てられぬゴミ)の軍事利用だ。それはウラン238といって天然ウランより放射性は低いが45億年間(地球の誕生と同じ)放射性を保つ。衝撃を受けると科学的毒性を放つ放射性物質が大気に拡散し、人体に吸引吸収される。水によって地中に入り植物や動物に吸収され食物連鎖の中に入り込む。極めて広域な長期にわたる放射能汚染をもたらす。しかし密度の非常に高い金属なので大変重い。そこで戦車や分厚いコンクリートなども簡単に貫通する弾頭に使う。しかもゴミなので格段に安価。だからふんだんに通常兵器として使う!現代の先進経済のとどのつまりか。原発依存のエネルギー政策を転換しないと日本も危ない。少なくとも18の国々が所有し、日本をそのひとつに挙げる科学者もいる。憲法9条が改定されたら、被爆国日本も通常兵器として使用するというのか。広島沖の秋月弾薬庫にはあらゆる通常兵器が貯蔵されているという。岩国米軍基地からは既にDUを積んで飛び立ち沖縄鳥島で訓練使用している。
 こうした状況の中、世界各地からの警告の声が上がり、1996年、国連人権小委員会は、核兵器、化学兵器、生物兵器、クラスター爆弾とともにDUの廃絶を求める決議を採択した。欧州議会も使用禁止を求める決議をした。しかし現在、核爆発させなければ通常兵器、としてDUばかりか天然ウランやプルトニウム等の新型小型核兵器が開発されている。そんなこと考えるだけで「絶対悪」だと思うのだが、どうだろう。明らかに、国際刑事裁判所規定の「人道に対する罪」に該当している。
 さて、森瀧さんら「イラク戦争被害・劣化ウラン弾被害調査団」は今回、イラク全土での各種サンプル採集が活動の大半だったという。広大の原爆放射線医科学研究所や金沢大学のアドバイスと協力を受け、バグダッド市内、アブ・グレイブ、ナシリア、バスラ等、全国13箇所でのバンカーバスター爆撃跡の水、水道水や、破壊された戦車のチリ等からDU使用を示す証拠としてウラン238を検出した。更に、DUが人体に取り込まれたことを証明するために22人、24時間分の尿を採集し濃度の異常に高いウラン238を検出した。訪問した病院では患者の大半がこどもで、ほとんどが白血病か腎臓腫瘍、悪性リンパ腫。そのほとんどが末期で救えない!そのうえに先天性の知的、身体的障害を併せ持つこども達の姿や親たちの絶叫がビデオで映し出されると、会場には嗚咽さえ聞こえた。
 兵士ではなく一般住民、こども達の体内にDUをとりこんでしまっている事実。45億年にもおよぶ環境汚染。そのDU使用の「犯罪性」を科学的に証明し、被害の実態を示して、救済を求めよう。あの地雷兵器を国際的な署名運動によって禁止条約を締結させたように、DU禁止条約も、わたし達一人ひとりの市民が、人々に語りかけては広め、国際署名活動に協力していただいて、条約締結を実現させようではないか、と呼びかけられた。今、署名の1次集約では12万筆が集められたと聞くから、これからが正念場だ。森瀧さんは、科学的な証拠と寄せられた世界市民の署名を携えてしかるべき機関へ乗り込む考えだ。
 なお、破壊された被占領地では薬も医療器具もない。白血病は日本では7割が助かるというが、イラクでは9パーセントだ。日本政府の50億ドル復興支援は米国大企業が独占してしまう。病院へは何も届かないのだ。現状では非政府団体、市民の手で支援するほかない。DU使用禁止の一日も早い実現とともに、被害者への十分な医療支援と補償こそ緊急を要する。
 最後にもう一度、署名活動と医療カンパをお願いして、みんなでDU禁止条約を締結させよう、と呼びかけられた。

報告:尾道久保教会 寺田進(牧師)



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