「信教の自由」について
―「信教の自由を守る日」(2月11日)―

宇佐美 睦朗(神辺教会牧師)

 毎年2月11日を信教の自由を守る日として、教会歴に組み込み守っています。それは、戦時中に信教の自由が侵され弾圧されたことを想起し、再びそのようなことが起こらないようにすることと、日本政府が、全く根拠のない2月11日を建国の日として祝日とし、それを祝うように決めたことにあります。
 最近、とみにクローズ・アップされるようになったのは、小泉首相の靖国神社参拝違憲訴訟が各地で提起され、裁判所で、判断が示されるようになって、関心が高まってきたことにあります。
歴史を少し見てみますと、わたしたちの所属するプロテスタント教会の信仰は、1860年代に伝えられました。欧米の文化を学ぶために、宣教師と接触が始まり、その学びの中で感銘を受けた11人により、1872年(明治5年)に日本に最初のプロテスタント教会が設立されます。1873年(明治6年)外国の圧力により、辻々に立てられていた、キリシタン禁制の高札が取り払われます。これは、キリスト教が公認されたわけではなく、黙認でした。
 1889年(明治22年)、帝国憲法(明治憲法)が発布され、その22条に、「日本臣民は安寧秩序を妨げず及び臣民たるの義務に背かざる限りに於いて信教の自由を有す」と、ここで初めて信教の自由が憲法に盛り込まれました。キリスト教会は、これで、神道や仏教と同等になったと喜びましたが、帝国憲法の理念である「天皇は神聖にして犯すべからず」ということがどういうことか、その意味を深く考えなかったのは事実であります。翌1890年(明治23年)に公布された教育勅語によって、国民はマインド・コントロールされ、知らず知らずのうちに、国民は天皇の民(天皇の所有物)として歩まされるのであります。
 敗戦後、1946年帝国憲法改正という形で、新憲法が公布されました。その第3章には、『国民の権利及び義務』が詳しく盛り込まれています。
 20条 信教の自由は何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。
 −2 何人も宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されない。
 −3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない。
 この第3章には、基本的人権とか法の下に平等、言論の自由、学問の自由とか、わたしたちにとって重要な事柄が盛り込まれていますので一読をお奨めします。
 日本が15年戦争(1931年から1945年)を続ける中で、キリスト教会は天皇礼拝を強要されました。官憲監視の下に宮城遙拝、国歌斉唱の後、礼拝がなされ、説教までチェックされたのです。信教の自由は何の効力もなかったことになります。
 今の日本人でさえ、憲法が国民の権利を守るためだけではなく、権力者の横暴を防ぐためにあることの認識がありません。だから、権力者は、直接憲法を改訂しなくとも巧妙な手段で立法化し憲法に盛り込まれている理念をなし崩し的に排除している状況に気づいていません。例えば、国民保護法を制定しましたが、いかにも国民を保護するかような表現をしていますが、個人の権利を制限し、権力者の行為を公共の利益ための行為として自由にできるようにするためのものです。公共のためかどうか、その決定権を権力者が握っているわけですから、何でもできることになります。
 今、小泉首相の靖国神社参拝が憲法に反するということで各地において裁判が続けられています。裁判所は、首相の参拝が憲法20条3項に抵触し公式参拝と認めても、それが憲法違反に当たらないと判断しています。全くおかしな論理です。司法が行政の監視の役を放棄しているのが現状です。この卑劣な司法の態度に憤りを感じます。
 今まで政府が立法化したもののほとんどは、日本を戦争する国に仕立て上げ、国民の権利を制限し、有無を言わせず、戦争に協力させようとする流れの中にあるわけです。慥かに表面的には信教の自由を侵していないようなふりをしていますが、靖国神社に国家の責任者が参拝すること自体、宗教活動をしているのであり、特定の宗教に肩入れしていることになって、わたしたちの宣教を妨害していることになります。首相の参拝の本音は、天皇が靖国神社を参拝できる素地を作ることにあります(閣僚級の日本は神の国発言、日本は天皇中心の国発言が裏付けます)。
 そういうことになれば、天皇が国家最高の元首に復活し、我らの信ずる神が否定されかねません。それは、帝国憲法時代の苦難の時代に回帰することになります。加えて、戦争する国を目指して突き進もうとする国家の危うい足取りにノーを突きつけるためにも、信教に自由を守る日に、キリスト教会が一致して行動しなければならないのではないでしょうか。


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