8月のメッセージ「平和聖日」について

宇佐美睦朗(神辺教会牧師)

日本基督教団の行事暦において、8月6日を「平和聖日」と決めています。1945年8月6日広島に、同8月9日長崎に原爆が投下され、20数万人が死傷しました。二度とこのようなことがあってはならないと、毎年この日を想起し、集会を守るように奨められています。
2000年頃のわたしの個人的経験ですが、20世紀の報道写真展覧会があり、それに行ってきました。20世紀は戦争の世紀といわれるほど戦争に終始しましたが、写真のかなりの枚数が戦場やその関連のものでした。人間の愚かな歴史を証明する貴重な写真とも言えるでしょう。その中の1枚に釘付けになりました。写真は、小学校5〜6年生と思われる子供が弟であろう小さな子を背負って何かを見つめている情景を写していました。背負っている子は一目見て死んでいることが判りました。
写真の横に解説が付けてあり、1945年8月20日頃長崎で撮影。子供は遺体を荼毘に付す順を待っていた。やがて大人に遺体を預け、弟の焼け落ちるのを確認し、とぼとぼと帰って行ったと説明していました。
この写真は、敗戦後旬日を経ずして、アメリカの報道カメラマンが、長崎の原爆の効果を撮影したときのもであったわけです。
この子の両親や兄弟はどうしたのだろうか。原爆で犠牲になってしまったのだろうか。こんな幼い子が、遺体の始末をせざるを得なかったことを思うと、その場で立ちすくみました。戦争の大罪を告発している貴重な写真でした。
人間はどうして戦争したがるのでしょう。支配欲・独占欲、目的のためには手段を選ばない思い上がりがそうさせているのではないでしょうか。
日本は今、過去の戦争の傷みを知らない者たちが、再び戦争する国にしようと躍起になっています。日本が過去に侵略戦争をしたことは口先で認め謝罪していますが、戦争責任を果たしていないのは事実であります。この辺で、もう一度戦争責任について、明確な判断をし、責任をどう果たしていくべきか検討しなければなりません。
最近読んだ記事を紹介します。
「イラクのバグダッドで息子のケイシーさんを失った母親のシンディ・シーハンさんは、<平和を求める遺族の会>を立ち上げてイラク戦争の批判を展開してきた。ブッシュ大統領が演説で、『彼らは高貴な大義ために命を捨てた〜』に触れ、直接会見して自分の息子の死を戦争継続の理由にしないこと、また、イラク戦争がそんなに高貴な大義であるなら、彼の双子の娘、また、この戦争を企画した者たちの子どもが、何故戦場に行って危険を冒さないのかと、問いただしたい、と新聞記事になった(キリストの平和−講演集−教団東京教区 西南支区社会担当)。」
ここに書かれているように戦争を企画している者たちは、自らは安全地帯に身を置いて、危険は兵士におっかぶせている無責任さを告発しています。また、息子の死を戦争継続の理由にしないこと、というシーハンさんの主張は、靖国問題に通じるものがあります。靖国に祀るから国家のために命をささげて欲しいという論理のもとに、小泉首相を始め歴代の首相が靖国参拝をしてきた。首相たちは、シーハンさんの思いとは逆の行動をとっている事になります。外国と戦争して、今後発生するであろう戦死者の受け皿として、靖国神社の必要性を強調し、戦地に行く者を鼓舞するために首相たちが靖国参拝を続けて来たわけです。如何に危険な思想であるかが判ります。
さて、平和は戦争の対立語ではありません。勿論、戦争のないことをも含みますが、人間を不安に陥れるものすべてからの解放が平和であり、平安であります。聖書は、「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる(マタイによる福音書5章9節)」とか、「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる(マタイによる福音書26章52節)」、と説いています。
ゆえにわたしたちは、平和の福音の運び屋にならなければなりません。
僅か1%のキリスト者に何ができるかという向きもありますが、わたしたちは、主イエスに地の塩になれと言われています。塩は大量を要しません。少数で重要な働きが出来るはずです。今必要な正義と平和を世に証していかねばなりません。塩に塩気がなくなれば、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである、とも警告されています。正義と平和がないがしろにされつつある今、自分の世界に沈潜していてはならないのです。
「正義が造り出すものは平和であり 正義が生み出すものはとこしえに安らかな信頼である(イザヤ書32章17節)。」と語られているように、真の平和実現のために地の塩として働きましょう。



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